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【虹ヶ咲】桜坂しずくというスクールアイドルについて【スクスタ】

 

 

この文章は自分の中で“桜坂しずく”について整理するべく個人的な見解に基づいてスクスタの各ストーリーを振り返ったものです。故にネタバレを多量に含むのでご注意ください。

(ここでは「あなた」のことを「先輩」と表記しています)

 

 

 

 

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桜坂しずくは、物語の世界が大好きで、自分もその世界の一部になること、つまりその登場人物を演じることが大好きな少女です。

だから将来は女優になることを志し、その勉強のために、高校では演劇部と両立してスクールアイドル同好会に所属します。

 

 

“演じること”とスクールアイドル

女優という将来の夢のため、と言っても真面目な彼女はスクールアイドル活動にも決して手を抜くことは無く、それどころか共に頑張る仲間の影響で、いつしかスクールアイドル活動にも夢中になっていきます。

 

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サイドエピソード「叶えたい、夢」より

とは言っても、やはり彼女は演じることが大好き。スクールアイドル活動においても演じることで見ている人を楽しませようとしていました。演じるのはしずく自身が魅力的に思うスクールアイドル。

 

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キズナエピソード6話より

しかし、スクールアイドルのステージは自分と完全に違う誰かを演じる女優の舞台とは異なり、自分自身を魅せるもの。演じていることでステージがちぐはぐなものになっていると先輩に指摘されたしずくは演じるのでは無く自分をありのままに出すステージに挑戦します。

結果は上々。客席も今までで1番の盛り上がりを見せました。けれど当のしずくの心にはモヤモヤが残ります。

それは、ありのままの自分を出したステージが賞賛されたことで、これまで信じてきた「演じる」ことが否定されたように感じたこと。そして何より、スクールアイドルとしての拠り所となる“自分らしさ”が何であるのか分からなかったこと。

 

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キズナエピソード7話より

そこからしずくは、自分らしいスクールアイドルの在り方を模索していきます。

 

 

“桜坂しずくらしさ”とは?

自分らしさを見つけるべく、しずくは単身でAqours、そしてμ'sの元へ向かいます。

 

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キズナエピソード8話より

ここで梨子も言っていますが、壁にぶつかって、そこから単身で沼津まで赴けるのはなかなかに行動力あるな…と思います。慎重ではあるけれどこうと決めたら曲がらない、大胆に動ける子なんですよね。

 

そしてここで千歌がスクールアイドルになろうと決めた時の話を聞きます。

「μ'sのライブを見て、私たちもあんな風にキラキラ輝きたいって思ったの!」

「それは、μ'sの真似から始めたということですか?」

「ううん、違うよ。μ'sの真似をしても、μ'sみたいにはなれないもん」

憧れはμ'sだったけれど、μ'sの輝きはμ'sだけのもの。だからAqoursAqoursだけの輝きを見つけたい、と千歌は言います。

 

その後、μ'sのもとでも同じように穂乃果から話を聞きます。穂乃果も初めは憧れからだったという話を聞いた後に、今度はしずくが逆にμ'sからアドバイスを求められます。それは鳥を演じることになった穂乃果に対してのもの。なんでも穂乃果は鳥の気持ちを知るために屋根から飛ぼうとしていたそう。

鳥そのものになろうとする穂乃果の考え方はしずくの目には意外なものに写りました。

 

そうしてしずくは、自分のやり方の間違っていた部分に気が付きます。それは、これまでの自分の演技は演じる役そのものになるのでは無く、その役を演じる他の誰かの真似をしていただけだったということ。それでは「自分なりの表現」とは言えない。自分自身の輝きを見せられていなかったのです。

そのことにややショックを受けたようなしずくでしたが、それでも諦めず、今度は同好会のメンバーを見てなりきっていくことで自分らしさを探っていきます。

 

そうして、しずくがたどり着いた結論は1つ。

 

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キズナエピソード11話より

自分には、やはり演じることしかできない、ずっと前から演じることが大好きだから、これからも演じ続けたい。それが、しずくの出した答えでした。

そしてしずくはAqoursやμ'sとの話の中で見つけた問題を克服するため、そして演じることを極めるため、自身の演じたいスクールアイドルを、1人の役に落とし込んでいきます。そしてそれが、“桜坂しずくらしい”表現となっていきます。

 

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自分の大好きな世界を魅せる

その後、演じることを追求していくことを決めたしずくは、自身のファンクラブを作り、そこで行うイベントについて考えることとなります。。しかし、他の同好会のメンバーがやりそうなことは想像できても、自分のことになるとよく分からないと言います。そこで先輩から「しずくちゃんが楽しいと思うことを共有しよう」とアドバイスされたしずく。

しずくが楽しいと思うことはやはり演じること。しかし、観客と演じることそのものを共有することはできません。そこでしずく自身が考えた物語を伝えることでその楽しさを伝えようと朗読と歌を合わせたパフォーマンスをすることに。そしてそこで披露する物語について考え始めます。

 

しずくの披露したい物語の世界観、それは「この世界は演劇そのもの」ということ。

人生は舞台そのもの。その物語をしずくは「すべての、はじまりの物語」と称します。

そして、しずくの考えた物語が語られます。

 

「数えきれないほどのスクールアイドルたちが、私の中から溢れ出す」

「明日はどんなスクールアイドルを演じよう?どんな人生を演じたい?」

「演じることと、スクールアイドルが大好きな私を引っ張ってくれたその手」

「だから私は、今日も演じる。そして、伝える。私のなかの、最高のスクールアイドルを!」

 

同好会の仲間の存在、背中を押してくれる先輩、そして、演じることを諦めることなくスクールアイドルでいられること。それら全てに対するしずく自身の喜びが、その物語からひしひしと伝わってきます。

しずくが言うには、その物語の主人公はしずくであってしずくではないイメージとのこと。

 

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キズナエピソード20話より

 

しずくがファンのみんなと共有したいと思った世界はしずくの生きる大好きな世界を物語として再構成したような、そんな物語となりました。

 

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キズナエピソード21話より

 

そして、そのステージを見て楽しんでくれたファンのみんな。それに支えられるしずく。たとえ演じるステージであっても、スクールアイドルとファンの相互の関係が成り立っていることが描かれます。

 

キズナエピソードは現在ここで更新が止まっていますが、その後メインストーリーにおいて大きな転機が訪れます。

 

 

そこにあったのに、わからなかったこと

その転機というのは、スクールアイドル部の台頭です。

同好会への妨害で練習もステージもままならず、その上ミアの作る才能溢れる楽曲とランジュの圧倒的なパフォーマンスによって学園の生徒たちも次々に部を応援していくようになっていきます。

そんな中でもどうにかゲリラライブを行って同好会の立て直しを図りますが、それすらも部によって観客がほとんどいない状態になってしまいます。

 

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ストーリー第20章第9話より

 

まばらな観客。それでも自分のステージを貫いたかすみは笑顔で舞台袖に戻ってきます。

そんなかすみを見て、しずくは「今の自分はあんな風には言えない」と感じ、自分自身もそれに負けたくないという思いを抱きます。

 

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ストーリー第20章第10話より

そして、部の圧倒的なステージと、それでもなお忘れられない同好会のステージが何が違うのか、それを自身の目で確かめ、自分もかすみに負けないステージを作るため、しずくは部への移籍を決断します。

 

その後、部での活動をスタートしたしずくは部の整った設備や練習メニュー、そしてランジュの完璧なパフォーマンスを目の当たりにします。そして、自分の追い求めるスタイルはこれなのかもしれないと考え始めます

そうして厳しい練習を重ね、部のステージでソロパートを任せられるに至りました。その完成度は同好会の頃より格段にレベルアップしていました。けれど、そのステージを見た先輩とかすみはどこか違和感を感じます。

 

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ストーリー第21章第5話より

いつものしずくとはどこか違うライブ。技術は向上していたものの、「声が届かなかった」とかすみは言います。それだけでしずくは納得できませんでしたが、それ以上言葉にすることができなかったかすみは自分のライブでそれを教えると宣言。かすみには分かっていて、しずくが分かっていないこと、それをライブで伝えると言ってかすみは立ち去ります。

 

そして同好会のゲリラライブ当日。

技術は及ばなくても、全力のかすみのステージにしずくは次第に引き込まれていきます。

 

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ストーリー第21章第6話より

 

元はと言えば、かすみに負けたくないという思いで部への移籍を決断したしずく。そして部での洗練された練習を積み重ね、技術は格段にレベルアップし、これが自分に合ったやり方だと思うようになった。それなのに、まだかすみに叶わない。この間まで自分も同好会にいて、さらに部での経験も手に入れたのに、どうして自分にはあんなライブができないのか、しずくはまた深く悩みます。

 

そんな中、しずくは1人で部のステージに立つことに。

ミアの作った楽曲に1番マッチしたのがしずくだった。だから、その楽曲に合った世界観をステージの上で披露して欲しいと言われます。

ステージ上で独自の世界観を披露することはこれまでもしずくがずっとやってきたことです。しずくの1番得意なことであるはずなのに、かすみのライブを見た時のような感動を感じることができません。

 

自分がどうしたいのか、どうしたらいいのか分からなくなったしずくは先輩に相談をします。

そこで尋ねたのは「先輩はどんな風に曲作りをしているのか」ということ。

 

「私にあるのは、スクールアイドルのみんなが大好き、ってことだけ」

「でね、そんな私が『好き!』って思ったみんなの魅力は、きっとみんなのファンの人たちも同じように『好き!』って思ってると思う」

「だから、私はそのみんなの『魅力』を曲にぎゅーって詰め込んでるんだ」

 

同好会のメンバーを直接支える存在でありながら1番のファンである自分が思うみんなの魅力を楽曲に込めていると先輩は言います。

そんな話をするうちに、同好会で初めての曲を作った時のことを思い出すしずく。そして、かすみのライブで胸を揺さぶられた理由について少しずつ見え始めてきます。

 

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ストーリー第21章第8話より

スクールアイドルが自分の全力をステージにぶつけ、それをファンが全力で応援して、それを糧にスクールアイドルはさらに頑張っていく。それは、圧倒的なパフォーマンスと演出で魅了していく部のステージには無かったもの、そしてしずく自身も同好会のライブでずっと作り上げてきていたものでした。

そして何より、スクールアイドルが自分の全力をステージにぶつける上で大きな力となっていたのが、先輩が一つ一つに1人1人の魅力ややりたいことを詰め込んだ楽曲でした。

 

「私の曲にも、私自身にもあったんですよ……!」

「曲を通して私が伝えたい気持ち、受け取ってもらいたい想い、そしてそれを受け取ったみんなの声……」

「みんなで作り上げてきて行きたい私の世界、表現は……スクールアイドル同好会の表現は、ただ演じるだけじゃなかったんですね」

「先輩が──応援してくれるみんながいてくれて、一緒にステージを作るからできる表現、それが私たち虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のパフォーマンスなんです!」

 

しずくにも、かすみに負けないくらい魅力的なステージを作ることができていた。ただ、演じることに夢中になっていたしずくはそこがきちんと見えていなかったのだと思います。

周りのことは見えていても、自分のことになると不器用になってしまう。そして、それすらも魅力のひとつとなるのが同好会のステージでした。

 

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その後、しずくは部で任されたステージを終え、ランジュ達に賞賛されます。

ランジュに「次のパフォーマンスが楽しみ」と言われたしずくはそのままランジュ達をとある場所に連れていきます。そこは、同好会のゲリラライブ会場。

そこでしずくは、演じることと観ている人と一緒になれること、その両方を大切にできる同好会のステージに自分自身の思いをぶつけます。

 

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ストーリー第21章第9話より

 

演じることが好き。だから、スクールアイドルのステージでも演じていたい。でもしずくの大好きな同好会のステージはそれだけじゃなくて、観ている人と一緒に作れるステージ、観ている人のために演じられるステージだった。それは、桜坂しずく自身の純粋な気持ちでした。

 

 

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ストーリー第21章第10話より

 

そんなしずくのステージを見たかすみは「声が聞こえた」と言います。

かすみは多分、しずく自身が見えていなかったしずくのステージの魅力を感覚的にとはいえずっとわかっていたんだろうなと思います。

 

そうして、自分の気持ちがはっきりと見えたしずくは同好会に戻ることになります。

今後同好会と部がどうなっていくのかは分かりませんが、しずくはこれからも自分のステージを貫いて行けるんじゃないかな、そうだと良いなと思います。

 

 

 

◇後書きのような何か

ストーリー第21章公開前、いや2ndseasonが始まる前から、ずっと桜坂しずくをどう捉えたら良いのか、どう応援したら良いのか分からずにいまして。というのもキズナエピソード第20話で『やがてひとつの物語』に関わる話が語られた時、「本当にこれで良いのか?しずくの言う『ハッピーエンド』は本当にハッピーエンドなのか?」という思いがぐるぐるしていました。その中でしずくによって語られた物語の主人公は誰がどう見ても桜坂しずくそのものだったのですが、その主人公はいつも違うスクールアイドルを演じようとしていて、それが桜坂しずくそのものだと考えるといつかしずく自身が見えなくなってしまうのではないか?という思いに駆られて。

そんな中で投げ込まれたのが20章から21章の1連のストーリーでした。

全般的に見るとツッコミどころは多いし、そこはもう少しなんとかなったやろ!という所はあるのですが、桜坂しずく個人の物語としてはすごく大好きなストーリーです。

スクールアイドル桜坂しずくにとっての「演じること」は自分ではない誰かになることだけじゃなくて、自分自身をその役に乗せて見せていくことも含まれているんだと考えられるようになったんです。

「あなたのヒロイン」という言葉、そして『やがてひとつの物語』のMVの一緒にステージ上で踊っているようなカメラワークも、演じるしずくを介してしずくの大好きな世界に入り込んでしずく自身と一緒に楽しめるということが表現されているんじゃないかな、それが桜坂しずくのステージなんだと思えるようになりました。

 

 

もちろん人によって受け取り方は違うと思いますが、こういう受け取り方ができたことで私も、全力でしずくのことを応援できるようなったなと思えました。それが嬉しくて、どうにか自分の中で桜坂しずくの物語をまとめたものを残しておきたいと思ったのですが、長いな……。(ここまで6000字)(これでも色々削った)

それだけのパワーがあったということでひとつ、閉めたいと思います。

これからもしずくの大好きな世界を見せていって欲しいな!